試験資材のウイルスに対する不活化効果試験
試験番号
No.217095N
目的
試験資材と新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を反応させた時のウイルス不活化効果を確認するために実施した。
実施機関の名称
株式会社 食環境衛生研究所
群馬県前橋市荒口町561-21
試験スケジュール
試験受託日 2021 年4 月22 日
試験開始日 2021 年8 月30 日
試験終了日 2021 年10 月5 日
試験資材
試験資材①:銀イオン水1ppm
試験資材②:銀イオン水20ppm
試験資材③:銀イオン水60ppm
※対照資材として滅菌リン酸緩衝液を使用した。
供試微生物
SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)
人由来分離株:唾液よりvero 細胞を用いて分離培養後、リアルタイムPCRを用いてSARS-CoV-2 遺伝子の増幅の確認(厚生労働省通知法)を行ったウイルス株
培養細胞:vero 細胞(アフリカミドリザルの腎臓上皮由来株化細胞)
区の設定
区 | 処置 | 感作時間 |
対照区 | リン酸緩衝液10mL にウイルス液1mL 添加 | 試験開始後0、30 秒、1、5、10 分 |
試験区1 | 試験資材①10mL にウイルス液1mL 添加 | 試験開始後30 秒、1、5、10 分 |
試験区2 | 試験資材②10mL にウイルス液1mL 添加 | 試験開始後30 秒、1、5、10 分 |
試験区3 | 試験資材③10mL にウイルス液1mL 添加 | 試験開始後30 秒、1、5、10 分 |
試験方法
「ウイルス実験学 総論 改訂二版 丸善株式会社 ウイルス中和試験法」を参考として実施した。
試験手順
①予備試験:
試験実施前に、各資材を10 倍段階希釈後、培養細胞に接種し、37 ℃、5 %CO2下で5 日間培養した。培養細胞が正常な形状を示さなかった場合、資材による細胞毒性有りと判定し、本試験では細胞毒性が確認された希釈倍率を試験判定から除外した。
その結果、試験資材①では10 倍液で細胞毒性は確認されなかった。試験資材②及び試験資材③では10 倍液で細胞の発育不良が確認された。このため、本試験における検出限界は試験区1 では101.5 TCID50 / mL、試験区2及び試験区3では102.5TCID50 / mL とした。
②本試験・試験液混合:
試験区分に従い、試験資材及びリン酸緩衝液の各10mL をそれぞれ分取し、ウイルス液を添加した。
ウイルス液添加後、混合液として室温(25℃)にて所定の時間静置した。
③本試験・細胞接種:
試験区分ごとに感作が終了した混合液をそれぞれ10 倍段階希釈し、96well プレートに培養した細胞に100μL ずつ接種した。
判定は、37℃、炭酸ガス培養(5%)で5 日間培養した後、培養細胞を顕微鏡観察し、培養細胞に現れるCPE(細胞変性)をもってウイルス増殖の有無を確認し、その濃度を算出した。
④評価:
試験結果において、検査時点ごとに、対照区に対する試験区の減少率(%)を算出し、効果を確認した。
なお、本試験において減少率は以下の式で算出した。
減少率(%) = 対照区 – 試験区 / 対照区 × 100
結果
SARS-CoV-2 に対する試験結果を表1 及び図1 に示した。
対照区では試験開始時から、開始後10 分までの間にウイルス量の変化は見られなかった(107.5TCID50/mL)。
試験区1 では開始後30 秒で106.1 TCID50/mL( 95.93 % 減少)、10 分で105.7TCID50/mL(98.43%減少)となった。
試験区2 では30 秒で105.1 TCID50/mL(99.59%減少)、10 分で104.9 TCID50/mL(99.75%減少)となった。
試験区3 では30 秒で104.5 TCID50/mL(99.90%減少)、10 分で104.3 TCID50/mL(99.93%減少)となった。
表1 SARS-CoV-2 試験結果(TCID50/mL)
区 | 試験開始時 | 開始後30 秒 | 1分 | 3分 | 10分 |
対照区 | 107.5 | 107.5 (32000000) | 107.5 (32000000) | 107.5 (32000000) | 107.5 (32000000) |
試験区1 | 107.5 | 106.1 (1300000) | 106.1 (1300000) | 106.1 (1300000) | 105.7 (1300000) |
試験区2 | 107.5 | 105.1 (130000) | 105.1 (130000) | 105.1 (130000) | 104.9 (130000) |
試験区3 | 107.5 | 104.5 (32000) | 104.5 (32000) | 104.5 (32000) | 104.3 (32000) |
考察
今回、試験資材のSARS-CoV-2(新型コロナウイルス)に対する不活化効果試験を実施した。
その結果、試験資材①において、30 秒で95.93%、10 分で98.43%の不活化効果が、試験資材②において30 秒で99.59%、10 分で99.75%の不活化効果が、試験資材③において30 秒で99.90%、10 分で99.93%の不活化効果があることが判明した。